
さて、アダムとイブの運命を変える「ある生き物」とは…

オレだよ

ぎゃっ!
前回の話:ボクらが見るべき「夢」の本質(3)【この神話が恋愛の核心】
ヘビが登場して話が動き始める
ふたたびアダムとイブの話に戻ります。ここから話が展開していきます。
エデンの園でとても幸せな暮らしをすごしていたアダムとイブ。
ある日、生き物の中で一番賢いとされる蛇(ヘビ)に話しかけられるのです。
話しかけられたのはイブです。
ヘビはこう言います。

君たち、神様に「エデンの園の樹の実を食べてはいけない」って
言われたらしいけど本当?
イブは答えます。

いいえ、違います。エデンの園の樹の実は食べてもいいんです。
ただ「知恵の樹と生命の樹の実だけは食べてはいけない。
その樹に触れることも許されない。
それはお前たちが死に至らないためだ。」
と神様はおっしゃったんです。
するとヘビは、

そんなことないんだよ。
じつは、その実を食べても死ぬことは絶対にない。
その実を食べると、目が開かれ、君たちは神様のようになって、
善も悪も、一切のことがすべてわかるようになるよ。
と言うんですよ!

ヘビ怪しいわ〜
ついにリンゴを食べる二人
善悪の知恵の実、つまりリンゴですね。
すごく美味しそうで本当に神様になれるような、そんな美しい果実だったわけです。
イブは、その果実を取って食べてしまいます。
そしてその果実をアダムにも与え、アダムも食べました。
その瞬間、二人の目は開かれて、二人はイチジクの葉を綴り合わせて、性器を隠すのです。
果実を食べたことが神様に見つかったら怒られますから、バレないように近くの茂みに身を隠して息をひそめる。二人はずいぶん可愛らしい行動をします。

ここで少し解釈をします。
ヘビは巧妙でずるい言い方をしますよね。この神話についてよく言われるのは「ヘビの誘惑にイブが負け、リンゴを食べてしまった」という見方ですが、本当にそうでしょうか?
ヘビは「食べろ」とは一切言っていません。でも巧みに誘導しているわけです。
食べろと言ってないけど、イブの食べたい気持ちを後押ししている感じがするんですよ。
もう一つ面白いのが、ヘビは「知恵の実を食べても死なない」と言っていることです。
神様は絶対死ぬと言っているのに、ヘビは食べても絶対に死なないと断言していますね。ここはとても重要な部分なので、のちほどしっかり考えますので、覚えておいてください。
それでイブは、ヘビの誘惑ともとれる話を聞いて、ためらわずにパクっとすぐ食べちゃってるんですよね。そしてアダムにその果実を渡して二人で食べています。
ここが非常に面白いところなんですよね!この動作を色々考えると、 もしかして
二人は前からこんな話をしていたんじゃないかな、と思うんです。
なぜかというと、イブはヘビに話しかけられる前から、善悪の知恵の実をを食べちゃいけない、と知っているわけですよね。そしてヘビに話しかけられて答えています。
思い出して欲しいんですけど、もともと神様はアダムにだけ知恵の実を食べるなと忠告していました。けれど、イブもこの忠告を知っている。
つまりアダムはイブに以前から話をしていたのです。
なぜ、ためらわずに知恵の実を食べたのか
だから、こんな光景が思い浮かべられると思うんですよ。
エデンの園、美しい湖のほとりかなんかでアダムとイブが二人で寝そべっている。
楽園ですから、花が咲き誇っていて、蝶が舞い鳥のさえずりも聞こえる。
美しい自然の中でピクニックみたいな感じですかね。
そこでアダムはイブに話すわけです。

あのさ、善悪の知恵の実のこと
前に話したじゃない。覚えてる?

覚えてるわ

気になるんだ。
どうしても食べてみたいんだよね

本当に!
私も食べたいなって思ってた。
でもアダム、あの実を食べると死ぬって神様に言われたんでしょ?

そうなんだよ。あの美しくて美味しそうな果実。
食べたいけど、食べると死んでしまうと言われてる。
ふたりはエデンの園、楽園にいます。この楽園にいる限り永遠に死ぬことはありません。 そんな場所に二人は生きているんですよね。
だけど、アダムはどうしてもあの果実、善悪の知恵の実を食べたいと思った。だからパートナーであるイブにその話をしたのではないかと思います。
食べれば楽園から追放、つまり死ぬわけですからね。

あの実をどうしても食べてみたい。
そして善悪というものを知りたい。
知恵というものを得てみたい。
この楽園にいることができなくなるかもしれないけど、
僕はその知恵の実を食べて、神になってみたいと思ってる。
そんなアダムの告白があった。イブは答えます。

いいわ。
一緒に食べましょう。
あなたと一緒に食べて、その結果、二人で死んでしまっても
それはそれでいいわ。
この美しい楽園での生活を終えることになるかもしれないけど
それでもあのリンゴを食べてみたい。
善悪なるものを知ってみたい。
私はあなたと、神様になる未知の旅に出かけてみたい。

もし神様にばれてしまったとしても、私は神様から食べちゃダメって言われたわけじゃないからね。
だから神様にバレたら私のせいにすればいいよ。
「イブが勝手に食べちゃったから俺は食べたんですよ」
って言えばいいんじゃない。
…という会話があったんじゃないかと、僕は想像するんですよね。
アダムは夢を語り、イブはアダムに心を動かされた
神様に禁じられて、絶対死ぬとまで言われたにもかかわらず、アダムとイブは「善悪の知恵の実をいつか食べたい」と願い、きっかけをずっと待っていた。
そんなところにヘビが現れて、きっかけを与えてくれた。
だから二人は知恵の実=リンゴを食べたんです。
それまでの人類史上、最大の罪を二人で一緒に犯してしまいます。
この行動で面白いなと感じるのは、この二人が楽しそうだな、ということなんです。
もちろん、罪ですよ。悪いことをしたんですけども、でも二人は「悪」を遊んでいるような、言い換えれば、これまでの倫理観を超えようとしている感じがするんですよね。
人類初の恋人たちは、世界から堕落し、未来を知った
何ひとつ不自由がない楽園生活よりも、善悪を知って神様になれるかもしれないという最大のロマンを二人は選んだわけです。罪を犯してまで、です。
これまでにない新しい世界へ旅立とうとしている。つまり世界の超越です。
しかも二人で一緒に食べてる感じがいいなぁと思います。なんだか可愛いらしいんですよね。だってアダムだけでこっそり食べてもいいわけだし、もちろんイブだけが食べてもいいのに、二人は一緒に食べるわけですよね。
二人で一緒に食べて、二人で新しい世界へ超越して行く。
これこそ理想的な恋愛以外の何物でもありません。これが恋人同士なんですよね。
そしてこの二人の行動は、人類初の堕落と言えるのではないかと僕は思います。
坂口安吾が論じる意味での堕落です。
二人は、世界の終わりに堕落していった。悪なるものを一緒に遊んで、世界秩序を二人で超えていったんです。
だからアダムとイブという人類ではじめての恋人同士は、とてつもなくかっこいいなと思うんですよね。
アダムとイブから連想する「悪の華」
このアダムとイブの神話から、ある詩を思い浮かべたので紹介します。
作家・ボードレールの「悪の華」の中にある「旅」という詩の一部です。
僕たちは渇望している
ボードレール「悪の華」より
深淵の奥底に身を投げることを
地獄であろうと天国であろうと
どこでも良い
未知なるものの奥底に新しさを探し出すため
出典:「ボードレール「悪の華」オーギュスト・ロダンの挿絵 ロダン美術館蔵

次回は、堕落したアダムとイブに何が起きたか、
くわしく解説するよ〜!




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